科学技術コミュニケーションについての実践研究 ~サイエンスカフェの事例を通して~ 生活科学部 現代生活学科 教授 行実 洋一 メディア教育とサイエンスカフェ 筆者は長年、テレビ業界で現場製作者として、数多くの科学技術に関わる番組を手がけてきた。『素敵な宇宙船地球号』(テレビ朝日、ギャラクシー賞、科学放送高柳記念賞等受賞)、『でんじろう先生の日曜実験室ラブラボ!』(中京テレビ、日本民間放送連盟最優秀賞等受賞)、『生命三十八億年スペシャル 人間とは何だ』(TBSテレビ、ギャラクシー賞等受賞)、及び『サイエンスチャンネル』(科学技術振興機構提供)の各番組など 番組の企画立案・制作に携わる中、マスメディアを通じた科学技術コミュニケーションの在りようについては常日頃考えさせられる立場にいた。その一方で、市民レベル、いわゆる草の根市民レベルで科学技術がどう受け止められているかは、視聴率の推移や毎分変化、男女年齢別といった視聴者層による差異など、データ上からうかがい知ることが一般的であった。 市民を巡るメディア環境を劇的に変化させ、いわゆるマスメディアによる啓蒙型、あるいは情報・番組提供型という一方向的な科学技術コミュニケーションそのものを大きく見直す契機を与えている。 これまで職業的に従事してきたマス・コミュニケーションとは違う形での、地域や個人に即したコミュニケーション研究の機会を設けたいと考えていた。 ヤマグチロボット研究所代表の山口仁一氏 ヒト型ロボットの開発を巡る歴史や現状について、ビデオ動画を使いながら講演を行ってもらい、同時にその中で、学生に幾つかの問題提起をしてもらう形をとった。 「ヒト型ロボット」の研究開発というテーマは、同じロボットといっても一般的な産業用ロボットと比べ、視覚的にも学生の興味関心を喚起しやすい。 技術開発自体が持つ社会的・倫理的側面を考えるものであり、理数系の知識のない学生にとっても十分問題意識を持って取り組めることの出来るものであった。そのためか、グループごとに発表された答えも、それなりにうなずけるものが多く、それを踏まえた山口氏の講評がさらに興味を掻き立てるという、好循環を生んでくれた。 現代生活学科ではさらに地域連繋の要素を深めた、あるいは科学技術の専門家やメディア・コミュニケーションの当事者等を招いた形でのサイエンスカフェの実施を考えており、今回の試験的な実施を踏まえた、より実験的な計画を模索していきたい。 |