「ゆるやかな関係性」とコミュニティ再生 生活科学部 現代生活学科 教授 須賀 由紀子 コミュニティ再生の問題を考えるにあたって、ここでは住民主体のコミュニケーションから地域の活性化につなげた島根県隠岐郡海士町のまちづくりと、アートの力が独自のコミュニティを創りだした東京都美術館におけるアート・コミュニケータ(愛称=とびラー)の二つの事例を取り上げてみたい 財政破綻、過疎化の危機に瀕し、「消える」寸前だった島の復活の奇跡に、全国から視察が絶えない状況 ゼロからかたちを作っていく、そしてそれが、自分だけのためのものではなく、島の暮らし方の良さへとつながっていく。共同性の中から公共性が生まれています 愚痴を言わない。ため息つかない。否定しない。受けとめあう の多様性の中に創発性が生まれる コレクションではなくコネクション 新聞社やテレビ局などのメディアと世界の美術館との「コネクション」、また、広く市民・作家に作品展の場を提供し、一般愛好家との「コネクション」も大切 「面白そう」と思ってそこに集った者同士の「関わりの中の創造」 たまたま場を同じくした者同士が、縛り合わない「ゆるやかな関係性」の中にあることが特徴 各自の精神が自由に解放されるのです。その結果として、公共性を伴うことになります アートは、あらゆる多様性を包み込みつつ、その中で、人間という存在の真実あるいは本質を実感させる力があるからこそ人をひきつける 海士町のまちづくりでもとびラーでも、「相手を縛らない」「否定しない」ということですが、そのようなルールがなくても、自分の存在意義を感じる本質的なものに関わっているということで、他者を束縛しない自立的な自由な雰囲気を生むのではないでしょうか 家庭(地域)でも仕事でもない、「第三の場(サード・プレイス)」という自分ならではの場 地域に根ざした文化・歴史の営みを深く学び、地域の生活文化や目に見える風景の中に意味を感じる心を養うこと。そして、その価値を深く理解するために、善く生きるための普遍的な価値について知的に理解していく学び