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今年は「愛Love」を取り上げます

2014/04/22 11:53 に jun inutsuka が投稿   [ 2014/04/22 11:55 に更新しました ]

人間にとって価値判断や行動の基準となる基礎概念について、古典名著でどのように取り上げてきたか、読み語り合うグレートブックス・セミナー。今年度は「愛Love」をテーマに、プラトン、アリストテレスからはじめて、中世、近代、現代へと読み進めます。

「愛」はもちろん、現代人にとって決定的に重要な概念です。愛するもののために、と言えば判断の第一の根拠になりますし、何か大切なことを決めなければならないときにも、いったん心を落ち着けて、自分が愛しているのは一体何なのか、と問い直すことが後悔しない選択のためには必要なことでしょう。

しかし、この誰にも理解できる普遍的な、根源的なものに見える「愛」が、今日のような意味内容を持つようになったのは、比較的最近のことなのです。今日「愛」の一言で言い表していることは、かつてはさまざまな言葉で表現される、いくつもの異なることでした。また異なる言語の間では、ぴったりと交換(翻訳)可能な単語などないように、文化を越えて共通の「愛」を見出すことも容易ではありません。例えば『源氏物語』が「愛」の文学であるとしても、原文に現代の意味での「愛す」を見つけることはできません。

日本語の「愛」はもちろん中国から伝来した漢字ですが、象形文字としての「愛」の字は、内側に心を抱いてのけぞる姿勢、後ろを振り返る後顧の姿の徴と解されています。そしてその姿はまさに、仏教では人を苦しめる煩悩の根源、悪念そのものです。「愛」は良い意味のものではなく、むしろ何とか努力して捨てるべきものだったのです。

それがどのようにして今日、私たちが使うような、世界の共通語、共通の価値概念となったのでしょう。現代英語のLoveに至る道を、まず古代ギリシアのプラトンからはじめて読んでゆきたいと思います。
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